ナミビア 〜Nombili のんびり〜

タイトルの「Nombili のんびり」とは私が活動している 地域のオシワンボ語の挨拶で「平穏」「穏やかな」という意味です。世界が平穏であってほしいと願いこのタイトルにしました。青年海外協力隊として活動しながら、大学院にて開発学についても学んでいます。様々な角度から綴っていきたいです。

ナミビアの教育制度、小学校の授業科目と進級について

 

ナミビアの教育制度と各種学校

小学校(Primary school)0~7年生、中学校(Junior Secondary school)8~9年生、高等学校(Senior Secondary School)10~12年生に分かれている。2018年度までは、中学校8~10年生、高等学校11~12年生であった。初等教育段階は1~7年生、中等教育段階は、8~12年生となる。また、小学校では、低学年段階(Junior primary phase)0~3年生と、高学年段階(Senior primary phase)4~7年生と定義[1]されている。

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※1:Junior Secondary Semi-External Examination

※2:Namibia Senior Secondary Certificate Ordinary Level

※3:Namibia Senior Secondary Certificate Ordinary Level / Higher Level

※4:Namibia Senior Secondary Certificate Advanced Subsidiary

The National Curriculum for Basic Education(2016), National Promotion Policy Guide For Junior and Senior Secondary School Phases March 2018(2018)をもとに筆者作成。

 

[1] NIED 2016, The National Curriculum for Basic Education, pp.15-19

 

 ナミビアでは、3学期制を取り入れており、年度によって異なるが、おおよそ1学期は1月~3月、2学期は5月~7月、3学期は9~11月となる。義務教育は小学校1年生から10年間が義務教育であるが、2015年までは小学校までの7年間が無償であった。2016年1月から、私立を除いて初等教育中等教育段階である小学校から高等学校まですべて無償化となった[1]

低学年段階では、すべての教科を学級担任が教える担任制である。英語の授業以外は、英語を含め母国語の14言語[2](NIED[2016:30])のいずれかで学習することが明記されている。

小学校0年生(Pre-primary)については、保護者が申請することで、就学前の準備期間として、入学することができ義務教育ではない。小学校段階(0~7年生)の目的(NIED[2016:15])は、教育をする上での基盤を築くことであると述べられており、生活に不可欠な識字能力、計算能力、その他生活の中でのスキル、個人的、社会的発展を通じて自信と自尊心を確立することである。

中学校段階(NIED[2016:16])では、学習者の知識と技能を幅広く獲得し、学習者の価値観と態度を育て、継続的な学習に備える。幅広い科目を探求する機会を提供し、将来のキャリアの機会に応じて、十分な情報に基づいて科目を選択できるようにしている。

高等学校段階(NIED[2016:18])では、学習者の知識と技能を幅広く獲得し、学習者の価値観と態度を育て、継続的な学習と若者の生活に備える。 したがって、この段階では、学習者が生涯学習を継続できるように、「学習することを学ぶ」スキルを強固にする必要がある。

留年については、回数に制限が設けられており、小学校段階で2回の留年が可能で、中等教育段階で2回の留年が可能であると規定している。(NIED2016)しかしながら、教員や管理職の校長がこの進級制度について、正確に把握していないために、移籍[3]しなければならない児童や生徒においても、3度目の留年などが起こってしまうという事態が起こっている。そのため、最高でも22歳までの学校教育であるにもかかわらず、23歳以上の学習者が存在してしまっている現状がある。2021年までにカリキュラムが段階的に変更されていく予定である。中等教育段階では、10年生の扱いが変更され、2018年までは8~10年生までが中学校、11・12年生が高等学校であったが、図2-5に示したように、2019年から8・9年生が中学校、10~12年生が高等学校に変更された。2020年からは、高等学校卒業試験(Namibia Senior Secondary Certificate Ordinary Level)が11年生で実施される。また、2021年からは、国内外の大学等に進学する場合は、高等学校12年生に進学し、大学進学国家試験(Namibia Senior Secondary Certificate Advanced Subsidiary)が実施される予定である。

 

小学校の授業科目と進級

小学校の授業科目については、1〜3年生は、母国語または現地語、英語、算数、環境学習、宗教および道徳教育、芸術、体育の科目の7科目を履修する。低学年段階は、主に4つの領域があり、識字能力、計算能力、学習者の身近な環境に関する幅広い知識、そして個人の健康である。小学校1年生からHIV・AIDSの教育が始まる。これはナミビアHIV・AIDSの罹患者が10%[4]を超えており、対策を早い段階から予防を行うためである。

4年生では、「英語、母国語または現地語」、「算数」、「自然科学と健康教育」、「社会科」を履修し、「宗教および道徳教育、ライフスキル、情報とコミュニケーション、芸術、体育は、サポート科目として履修する。

5〜7年生では、英語、母国語または現地語、算数、自然科学と健康教育、社会科、デザインとテクノロジー、初等農業、家庭科を履修する。

高学年段階では、教科担任制に切り替わり、授業用言語の移行期間にあたる。基本的に授業のすべての科目で、英語での教授となる。低学年段階で構築された基盤を統合し、さらに発展させる。

 表2に示しているように、評価にはA~Uの6段階あり、小学校1年生から中学校9年生まで適用されている。(NIED[2016:54])この表2の適正範囲を基に進級を決めている。

1~3年生:母国語または現地語、英語、算数、環境学習、宗教および道徳教育、芸術、体育の7科目すべてが進級科目となる。しかし、試験が課されるわけではなく、教員が授業でのテストや様子などから評価する。以下の成績が得られたら次の学年に進級できる。

a)7教科中6教科でEグレード以上

b)学習構成として使用される言語のEグレード以上(リーディング構成の少なくともEを含む)

c)算数および母国語または現地語のEグレード以上

d)Eの全体的な平均(40%)。

4年生:英語、母国語または現地語、算数、社会科、自然科学と健康教育の進級科目5教科が、試験に課される。以下の成績が得られたら次の学年に進級できる。

a)進級科目の5教科中4教科でEグレード以上

b)英語のEグレード以上

c)算数および母国語または現地語のEグレード以上

d)Eの全体平均(40%)。

5~7年生:英語、母国語または現地語、算数、社会科、自然科学と健康教育、そして、デザインとテクノロジー、初等農業、家庭科の3科目から1科目を選択し、進級科目6教科が、試験に課される。以下の成績が得られたら次の学年に進級できる。

  a)進級科目の6教科中5教科でEグレード以上

  b)英語のEグレード以上

c)算数および母国語または現地語のEグレード以上

d)Eの全体平均(40%)

 

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適正範囲の記述

National Curriculum Basic Education 2016, P44-48を筆者が訳出



 

[1] Republic of Namibia Ministry of Education, Arts and Culture(2016)

[2] Afrikaans, English, German, Ju!’hoansi, Khoekhoegowab, Oshikwanyama, Oshindonga, Otjiherero, Rukwangali, Rumanyo, Setswana, Silozi, Thimbukushu, Namibian Sign Languageの14言語。

[3] 通常の進級は「promote」と表現し、2回以上の留年によって、自動的に学年が繰り上がること移籍「transfer」と表現している。

[4] Country factsheets NAMIBIA, UNAID 2018, https://www.unaids.org/en/regionscountries/countries/namibia

 

参考文献

・ National Institute for Educational Development (NIED) [2016]: “The National Curriculum for Basic Education” pp.15-19,30

・ National Institute for Educational Development (NIED) [2018] “National Promotion Policy Guide For Junior and Senior Secondary School Phases March 2018”

・ Republic of Namibia Ministry of Education, Arts and Culture(2016) “Free Secondary Education to be implemented at the start of 2016 school year” http://www.moe.gov.na/news_article.php?id=215&title=Free%20Secondary%20Education%20to%20be%20implemented%20at%20the%20start%20of%202016%20%20school%20year 

 

 

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