ナミビア 〜Nombili のんびり〜

タイトルの「Nombili のんびり」とは私が活動している 地域のオシワンボ語の挨拶で「平穏」「穏やかな」という意味です。世界が平穏であってほしいと願いこのタイトルにしました。青年海外協力隊として活動しながら、大学院にて開発学についても学んでいます。様々な角度から綴っていきたいです。

ナミビアの教員養成と教員の実態

 

ナミビアの教員養成

ナミビアには、国立ナミビア大学(University of Namibia:UNAM)、 国立ナミビア科学技術大学(Namibia University of Science and Technology: NUST)、私立国際マネジメント大学(International University of Management: IUM)の3つの大学が設置されている。その中でも、ナミビア大学は、教育学科があり、Windhoek、Ongwediva、Rundu、Katima Mulilo、Keetmanshoopに全国5つのキャンパスをもっている。ナミビア大学は、2012年終了した学習者中心の基礎教育教員養成課程(BETD)は3年間であったのに対して、4年間の大学卒業の学位をもって教員資格を授与される。BETDと同様に学習者主体の授業ができるよう、実践型の授業を展開している。例えば、授業においてプレゼンテーションを行うことや、グループ学習を行うなどがなされ、学習者主体の授業を体験的に学んでいる。

 大学では、2学期制の前期(First semester)と後期(Second semester)に分かれている。大学1年次(First Year)では、教育実習は実施されず、基礎的な教科に関する知識や理論を学ぶ。発表型の授業、グループ活動が取り入れられている。また、2年次(Second Year)から始まる教育実習に備えて、授業の練習や授業計画の作成や授業案を作成する。授業計画に関しては、一週間の授業をどう進めていくのかを教科ごとに記載していく。また、授業案に関しては、授業の目標、導入、授業構成、結論などの詳細を記入する。大学2年次からは、教育実習が行われる。出身校や自宅から近い学校などに申し込み、実習校が割り当てられる。2年次に4週間の教育実習が実施される。2年次では観察が中心で、授業は2回実施する。3年次(Third Year)には、前期に4週間、後期に3週間の計7週間の教育実習が実施され、実際に児童に対して授業を行う。4年次(Fourth Year)には、12週間の教育実習を実施し、校務分掌など教員としての仕事も行う。教育実習には、大学教授が観察し、チェックや評価を行っている。

 

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ナミビア大学の教育実習(2019年)

出典:University of Namibia, Faculty of education prospectus 2019, pp105より

 

資格については、教員資格のない講師が授業を行っている場合がある。病欠や産休などによる休職や小学校の教員不足によって求人を行っている。教員資格がなくとも小学校低学年段階は、大学の専攻に関係なく、「Diplomas」以上の学位があれば、講師として授業を行うことができる。また、小学校高学年段階以上の教科指導の場合には、大学の専攻に関係する教科を教授できる。ただし、永続的な勤務についてはできない。なお、ナミビアにおける学位は8つに分けることができ、大学の専攻によって幅広く学位の種類が変化する。小学校低学年段階における教員免許のない講師に向けた「INSET: In-service Education and Training」という5年契約の政府のプログラムが開かれている。休日や長期休暇などに講座が開催され、4年間のプログラムに参加することで教員資格を得ることができる。一方で、教員資格のない講師を多く雇用しているために、教育学科を卒業した資格のある人材が、雇用されないという問題も表出してきており、社会問題になっている。(New Era[2018])

 

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ナミビアの学位

 

出典:Namibia Qualifications Authority, (http://www.namqa.org/framework/Degrees/169/

 

ナミビア(オカハオ)の教員の実態

教員の実態について述べる。BETDの実施によって、学習者主体の授業の実践がなされるようになり、さらに2012年からの4年制の新しい教員養成課程に移り変わったものの、依然として授業は長い説明をした後、黒板に教科書の内容を書き、児童はノートに黒板の内容を写させて授業が終わる教員を見かける。そして、今回の調査した学校ではないが、黒板に教科書の内容を書いた後は、教員用机に座り、授業中に爪を切り始めたり、授業中に食事を始めたりする場合もある。また、で述べたように、バンツー教育の影響だと思われるが、年齢の高い教員は、図や絵を描くのが苦手な教員が多い。算数の時間にアナログ時計を黒板に描いた際には、円の形がいびつで、数字の位置についてもバランスがとれていないといった教員や、教員が筆算の教え方を知らず、児童がいつまで経っても数を数えて計算をしている授業がなされている。一方で、児童とともに歌を歌ったり体で動かしたりして、創意工夫した授業実践をしている教員や、フラッシュカードなどの教材を事前に作製し、グループ活動を取り入れ発表させるなどの努力している教員もいる。こうした多くの教員は、街の学校に多い。その要因として、利便性が良く、自宅から通えることにある。村の学校の教員は平日には村の教員住居に住み、休日に自宅へ戻ることが多い。そうしたことから、村の学校は人気がなくなる。

 

首都Windhoekの学校を視察した際には、グループ活動を取り入れ、工夫された授業を行っている教員が多いと感じた。筆者の活動地域のナミビア北部は、オデンダールプランのホームランド制によって「オバンボランド」と言われる地域である。歴史的に白人から追いやられた過去があることは第1節で述べた。これらの背景から地域や学校、そして教員によっても大きく差異がある。様々な背景があるものの、創意工夫がなされた授業や適切な児童へのアプローチの方法を知っている教員がいるのも事実である。しかし、情報交換をする場がなく一部の教員のみが取り入れている現状がある。教員免許をもっていない講師も働く学校の現場では、体罰をしなければならない状況や、授業の改善の方法を知らないことも考えられる。学校内の情報共有がきる環境や協力体制がなければ、改善していく方法が教員個人に任されてしまう。こうした教師の困り感を解消する手段を提供する必要性がある。

 

参考文献

・ University of Namibia(2019), Faculty of education prospectus 2019, pp105

http://www.unam.edu.na/sites/default/files/newsletter/faculty_of_education_prospectus_2019.pdf

・ Namibia Qualifications Authority, http://www.namqa.org/framework/Degrees/169/

・ New Era(2018), “Qualified teachers demand removal of unqualified” oneshttps://neweralive.na/posts/qualified-teachers-demand-removal-of-unqualified-ones

 

  修士論文からの抜粋になります。執筆やブログ等に引用する際は、ご連絡ください。

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