ナミビア 〜Nombili のんびり〜

タイトルの「Nombili のんびり」とは私が活動している 地域のオシワンボ語の挨拶で「平穏」「穏やかな」という意味です。世界が平穏であってほしいと願いこのタイトルにしました。青年海外協力隊として活動しながら、大学院にて開発学についても学んでいます。様々な角度から綴っていきたいです。

JICA海外協力隊現職教員特別参加制度20周年 ~日本の教育現場で活躍する帰国隊員~(ナミビア)

文部科学省の文部科学広報2021年7月号に掲載させていただきました。

結果的にブログの内容をまとめたような形になりましたが、このブログを書いていたおかげで、書きやすかったです。

ブログをやっていたからこそ、その時の気持ちを思い返すのもとても早かったです。

 

www.mext.go.jp

https://www.koho2.mext.go.jp/260/?pNo=13

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ナミビアにて教員研修を実施する様子

 

私は、現職参加制度によって、ナミビア北部に位置するオカハオという地域に派遣され、33校を管轄する教育支所で、現地の授業力の向上や教材開発などに取り組みました。日本で8年間の教員経験を積んだ上での派遣だったので、現地の小学校を巡回し、授業のアドバイスや教材の紹介などを行う際、日本での経験が大変役立ちました。

現地の先生の中には、自信をもって授業を行っており、外国人の私に対して、良い印象でない先生もいらっしゃいました。こうした環境の中で、日本での教員経験を活かした提案や、よりよい教育手法の紹介ができたことで、受け入れてもらえるようになりました。また、日本の在籍校の生徒たちに、ナミビアの日々の生活や文化などを紹介する「ナミビア通信」を毎月送付し、異文化に興味をもってもらうことができました。

ナミビアから帰国後、日本の中学校に復帰し、総合的な学習の時間において、国際理解教育を実施しました。日常におけるつながりを感じてほしいと思い、「日本と世界のつながり」というタイトルで、授業を行いました。例えば、「学校に行くこと」「水や電気が使えること」「近くにお店があること」などの日本人にとっての当たり前を投げかけ、海外では違うことがあることを伝えました。特にアフリカでは、電気が通っていない地域があること、水を毎日井戸から汲み、運んでいる人々がいること、学校に毎日通うことができない子供がいることなど写真を交えて話しました。昨年度は、コロナウイルス感染症の影響で、日本の生徒たちも学校に行けなかった期間があり、日常の生活が普通ではなくなったことを改めて考える時間にできました。

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総合学習「輸入や輸出ができない世界だったら?」

そのほかに、「もしも輸入や輸出ができない世界だったら?」というテーマのもと、どんなことが起こるのか考えさせました。生徒たちの身近にある筆箱や靴などがどこで作られているのか確認させると、靴は「ベトナム」、筆箱は「マレーシア」、など、ほとんどの製品が海外からの輸入品であるとわかりました。調べ学習では、SDGsについて、グループに分かれて発表をしました。「エコバッグを使う」「募金をする」などの声があり、今の暮らしと世界がつながっていることを一年かけて深めました。

最後に、私は、子供たちとのかかわりの中で、少数派の立場にも耳を傾けることのできる人間でありたいと思っています。私がナミビアで生活しているときに、街に唯一の日本人ということで、じろじろと見られたり、いわれようのないことを言われたりすることがありました。こうした経験により、日本に住んでいる外国人の視点に立ったり、マイノリティの方の気持ちになって考えられるようにもなりました。話をしたり、写真を見せたりすることはできますが、実際に経験しなければわからないことが多いと思います。聞くより見るより自分で経験をすることで、人の痛みもわかるようになると思います。これからの多様な社会において、勇気を出して挑戦してみようと思うような子供が一人でも増えてほしいと願っています。

 

 

 

ナミビアの独立記念日は3月21日で、2月9日は間違いです。

ナミビア独立記念日は3月21日です。2月9日は間違いです。

 

日本語のGoogleで調べると、独立記念日は2月9日と表示されますが、これは間違いです。2月9日は、憲法が採択された日にちで、3月21日が本当の独立記念日になります。

 英語版のナミビア独立記念日について、書かれた内容では、「『独立記念日』は、2月9日に憲法が採択され、その後、3月21日に独立に至った」というような文章が書かれているために、Googleが2月9日と勘違いをしてしまっているようですね。

ナミビアはドイツや南アフリカからの植民地支配があり、1990年3月21日に独立しました。そのため、ナミビアでは、3月21日は毎年「独立記念日」は祝日になります。

首都Windhoekでは大統領のスピーチがあり、テレビで放映されていました。街ではナミビアの国旗を着て歩く人も多く見られました。

 

2021年3月21日にナミビアは1990年に独立し、31回目の独立記念日を迎えました。

2020年に30周年を迎えましたが、昨年は、COVID-19が蔓延したため、祝賀のパーティーや催し物が予定されていましたが、ほとんど中止となってしまいました。

 ナミビアの学校では、独立記念日は休日になるため、前日に前日にお祝いをします。学校の授業はなく、大きな行事として伝統的なダンスを踊ったり、出し物を発表したりします。私が住んでいた地域オカハオでは、ピンク色の衣装が伝統的な衣装になります。この衣装を着て、太鼓を鳴らしながら踊っていました。

 

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 2019年の3月21日は、イチロー選手が最後の試合を行った日で、学生時代からイチロー選手のファンであり、ナミビアに居ながら、携帯にくぎ付けで、観戦と引退会見を見ていました。

jollyoshi.hatenablog.com

 

 

 2020年の3月21日は、JICA海外協力隊としての任務を終え、ナミビアから日本に帰国した日でした。ナミビア独立記念日は、自分にとって、特別な日でもあり、忘れられない日でもあります。

外務大臣からの感謝状を受け取りました。

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ちなみに今年、2021年3月21日は、英検準1級を受験していました。あまり手ごたえはありませんでしたが。。1年間、英語の生活から離れてしまったので、こうした検定やTOEICなどは定期的に受けていきたいと思っています。

 早く、COVID-19が終息することを願いつつ、新年度の準備をしていきたいと思います。

 

jollyoshi.hatenablog.com

中学生への国際理解教育(SDGs)②「もしも輸入や輸出ができない世界だったら?」〜JICA海外協力隊(ナミビア)を経て

 中学生に、「もしも輸入や輸出ができない世界だったら?」というテーマのもと、どんな世界になるのか、考えてもらいました。

 

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最後に「もしも、輸入や輸出ができない世界だったら?」というテーマをもとに、生徒たちに

「良いこと」「悪いこと」「どちらともいえない」ことに分けて意見を出してもらいました。そして、ポスターにまとめました。

 

 

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 中学生からは、以下のような意見が出てきました。

 

良いこと

輸入や輸出でのトラブルがなくなる。

日本の産業が守られる。

日本独自のものが残る。

石油などの代わりのものを研究し日本の科学がすすむ。

輸入による外来種などが来なくなり、在来種がいなくなることがなくなる。

魚の文化が増えるかも。

外国の勉強がいらない。

輸入したものから、未知の菌を持ち込むリスクが減る。

国内自給率が高くなる。
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「悪いこと」

いろんなものが入手できなくなり、生活に困る。

国家のお金がたまらなくなり、税金が上がる。

いざというときに、他国の関係がなければ助けを求めることや避難所をつくることができない。

車などの輸出ができなくなり、日本の利益がなくなってしまう。

物が足りなくなった国が他の国から盗んで戦争が起きる。

国と国とで争いが起きるかもしれない。

車やストーブなどの燃料を使う物がなくなる。

大量生産がされにくくなり、価格が高騰する。

輸入や輸出が盛んな日本は自給率が低いため、自立することができない。

他国の文化や情報のやり取りができなくなってしまう。

食料や衣類などが不足してしまう。

外国との商品の競争ができなくなり、よりいいものが作られなくなる。

最新の技術を共有できなくなる。

経済的に自立できない。

食べられるご飯の種類が限られる。

不安定な世界になってしまう。

世界の発達があまり進まなくなってしまう。

国内の資源が尽きてしまう。

機械のもととなる資源が手に入らず、たくさんの会社が潰れてしまう。

 

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「どちらでもない」

 独裁国家になってしまう可能性がある。

地球温暖化の進行。

すべてのものを日本でつくることとなる。

 

もしも輸入や輸出ができないと「悪いこと」として、日本の生活には欠かせないもの、燃料や衣服などが手に入らなくなってしまうこと、工業製品などの会社がつぶれてしまうこと、戦争が起きるなどが多くの意見がありました。

また、輸入や輸出ができないことで「良いこと」もあることを挙げられていたことが印象的でした。日本の食料自給率が上げられることや日本の伝統的な製品などが守られるなどの意見もありました。

 

しかし、良い面は見つかったとはいえ、輸入と輸出ができなくなることは、日本が自立して生きていくことは、難しい世界だといえます。

 

SDGsでは、難民や貧困に苦しむ人々にフォーカスすることがありますが、今の暮らしは世界の国々や人々に支えられて、動いているということを感じられる内容となったのではないかと思います。

今の暮らしと世界がどのようにつながるのか、生徒たちが世界に目を向けるきっかけになれば、幸いです。

 

 

参考資料はこちらとなります。

www.jica.go.jp

 

国際理解教育の教材や指導案など役立つものが掲載されているJICAサイトがあります。

www.jica.go.jp

中学生への国際理解教育(SDGs)①「日本と世界のつながり」を考える~JICA海外協力隊(ナミビア)を経て~

 中学生への国際理解教育(SDGs)①「日本と世界のつながり」を考える~JICA海外協力隊(ナミビア)を経て~

 

ナミビアから帰国後、中学校の教員に復帰し、総合的な学習の時間において、SDGsを基に、国際理解教育の授業を行いました。その授業の内容を紹介したいと思います。

 

ナミビアでの生活の話を踏まえて、普通とは何なのか、世界とどのようにつながっているのか、生徒たちに考えさせました。 

 

ここからは、実際に授業で使用したパワーポイントを載せていきます。

 

 

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「日本と世界のつながり」というタイトルで、日常とのつながりを感じてほしいと思いました。

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はじめに導入として、世界がどれぐらいの数の国があるのか紹介しました。

国連加盟国数は、193か国で、日本が承認している国家は197か国です。

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日本のパスポートは、ほとんどの国でビザなしで行くことができます。日本に住んでいる人が国外で、移民となるリスクが低いからであると言われています。

 

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COVID-19の影響により、人々の往来が自由ではなくなってしまい、これまでの生活が実は普通ではなかったことを感じさせました。JICAの隊員も全員世界から退避となったことも伝えました。

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当たり前とは何なのか、深めました。イヌ派かネコ派か。ドレッシングは何をかけるのか。お茶といえば、何が普通なのか。

あなたの普通は何ですか?

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2020年4月から6月の間は、日本では休校となり、学校に当たり前のように行けていた日常の生活は、普通ではなかったということを感じさせられたことを話しました。

 

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日本人にとって普通のことでも、世界では、常識外れとなることがあることも確認しました。

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お辞儀のこと、刺身を食べること、お風呂やシャワーを毎日入ること、元旦が1月1日であることが普通ではないということを紹介しました。

 

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実際に自分が体験したアフリカでの生活をしていた人の中には、毎日井戸から水を汲み、重い水を運ぶ毎日から始まる人々もいることを紹介しました。

 

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ナミビアのヒンバ族についても紹介しました。オイルを体に塗ることで、一生お風呂に入ることはありません。お風呂に入ることが当たり前の日本では考えられませんね。

 

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ナミビアの学校では、教室が足りないため、外で授業を行っていることもあったため、普通に学校の施設が整っていることが普通でない暮らしをしている人たちがいることを知ることも大切であると説明しました。

 

 

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JICAの資料を基にして、「ヒト」「モノ」「食べ物」の観点から、問題形式で問いました。

 

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「1日約2ドル以下で生活する人の数は何人いるか」

 

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答えは、7.7億人です。日本の人口の7倍の人々が、2ドル以下で生活しています。

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生徒たちには、身近にある筆箱や靴などがどこからできているのか確認しもらいました。すると、靴は「ベトナム」、筆箱は「マレーシア」、ワイシャツは「カンボジア」など、ほとんどの製品が、東南アジアからの輸入であることがほとんどであることを実感させました。

 

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「食べ物」として、日本の料理であるお好み焼きの原料の小麦は何パーセントが輸入でしょうか。

 

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日本の料理の一つであるお好み焼き。主な材料は、小麦ですが、90%は輸入でまかなわれており、その他の材料においても、輸入品が多いのです。

自給率を見てみると、豚肉は47%、エビは3%、かつおぶしは70%です。

 

「ヒト」「モノ」「食べ物」に分けてみてきましたが、日本の生活はすでに世界とつながっているということを感じてもらえたのではないかと思います。

この授業を通して、今の暮らしと世界がどのようにつながるのかを深めてほしいと思いました。

 

次に、中学生に「もしも輸入や輸出ができない世界だったら?」というテーマのもと、どんなことが起こるのか、考えてもらい日本と世界のつながりを考えてもらいました。こちらに載せました。

中学生への国際理解教育(SDGs)②「もしも輸入や輸出ができない世界だったら?」〜JICA海外協力隊(ナミビア)を経て - ナミビア 〜Nombili のんびり〜

 

参考資料はこちらとなります。

www.jica.go.jp

 

国際理解教育の教材や指導案など役立つものが掲載されているJICAサイトがあります。

www.jica.go.jp

JICA海外協力隊、ナミビア派遣 帰国報告会2020年12月オンラインにて

2020年12月、JICA海外協力隊の帰国報告会があり、私はアフリカのナミビア派遣の隊員として、報告を行いました。約70人もの方々が報告会に参加していただきました。

市区町村の表敬訪問にて、発表した内容とほとんど一緒となりますが、一部スライドを変更した点もありますので、再び掲載させていただきます。

 また、JICA中部では私の発表した箇所がYoutubeへ限定公開していますので、そちらをご覧いただければ、どのような発表をしたのかがわかります。

 

youtu.be

 

私は、 2020年3月に協力隊として任期を終えて、派遣された国で全うできた最後の隊員の代となります。後輩の隊員たちは、日本に緊急帰国をした後、日本で任期を終了した人たちがおり、本当に悲しい想いをしています。

そういった意味でも、約2年を異国の地を過ごしたJICA海外協力隊としての活動を紹介できる機会を頂けたことに感謝しなければなりません。

 

まだJICA海外協力隊の派遣ができない状況が続いています。さらに、アフリカでは第3の変異型のウイルスがナミビアの隣国、南アフリカで発生しているというニュースも流れてきています。

 

それでも、こうして興味をもってこの報告会に参加された方々がたくさんいることに、驚きがあったとともに、早く感染状況が良くなり、派遣が再開されることを祈るしかありません。

 

 

この報告をしたことで、様々な質問がいただくことができ、自分自身考えるきっかけとなりました。現職の教員がどのように子どもたちに、還元しているのかという質問もあり、どのようなことを行っているのか伝えていく必要性もあると感じました。

 

質問された内容は動画の中で答えていますが、それについてまとめました。その他にもメールにて、質問があったため、こちらに回答を載せさせていただきます。

 

〇現地で食べられているモパネワームは成長するとどんな虫になりますか。また、どんな味ですか。

蛾になります。現地の方々のたんぱく源となっており、煮干しやシシャモのような味でした。

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Wikipediaより

モパネワーム - Wikipedia

 

〇現地語で授業をしていたのですか。

ナミビアでは英語が現地語のため、基本的には英語でした。しかし、小学校1~3年生は現地語の授業のため、自分で現地語を覚えたり、細かい点については、現地の先生に英語から翻訳してもらいながら、模擬授業をしていました。

ちなみに、4年生から全教科が英語の授業になります。

 

〇授業研究は指導案を作成しましたか。

指導案をつくってもらうということまでは、実施しませんでした。指導案をつくる段階で現地の先生が心が折れてしまっては元も子もないため、授業実践をしてもらう前に、具体物やグループ活動をとりいれた授業をしていくように伝え、授業を見せてもらい、他の先生とフィードバックをしてというやり方をしていました。

 

〇日本の指導書などもっていきましたか。持っていくと良いものは何か。

日本の本や指導書をもっていきました。また、写真やイラスト付きのものを持っていくとよかったです。荷物になるため、PDFにするなどするとさらに良いかもしれません。

 

〇指導案をつくるというよりは、自分で授業をしていくという活動内容でしたか。

授業を見せることもしていましたが、多くの学校を巡回して授業をみせてもらい、改善点などを一緒に考えたり、日本の手法を伝えたりしていました。また、毎回訪問した際には、どのようなことを伝えたのか、レポートを校長先生や担当の先生に渡していました。

 

〇食事の違いに苦労したと思いますが、どのように乗り越えたか。また、どれくらいかかりましたか。

半年くらいかかりました。現地の人と一緒にお酒を飲んだりしながら、慣れていきました。

 

〇40度の発熱の際は、受診しましたか。

受診しました。ナミビアにおいては、一定の水準の医療は受けられるため、薬や注射などの処置を受けました。

 

〇こちらのアドバイスを受け入れてもらえましたか。

最初の頃は受け入れてもらえませんでした。

何度も訪問して、信頼関係を築き、徐々に連携が取れるようになっていきました。

事例検討会では、あまり訪問していなかった学校では、あまりうまくいかなかった学校もありました。

 

〇現地の教員の教育レベルや教員の立場はどうですか。高給取りですか

白人層がいる地域では、高い教育水準を受けることができます。しかし、地方の学校では、ただ教科書を読んでノートに写させるだけの授業や遊ばせているだけということもありました。

ナミビアでは、国として教育の向上に力を入れており、教員は優遇されており給料は高い職業です。他のアフリカの国では、教員のたちがあまり高くない国もあります。

 

〇現職教員として、今の職場でどのように活かしていますか。

SDGsが叫ばれており、国際理解教育において、教育に関することや砂漠化に関する世界の問題をナミビアでの経験を踏まえながら紹介しています。

 

〇小学校教育の活動内容では、指導する教科は算数が多いですか。

算数の割合が多いです。ただし、現地で必要だと感じたことを実践していくことが大切であると思います。実践した授業研究では、算数だけではなく、他の教科で授業をしてもらったこともあります。

 

〇質の高い教育とは何ですか。

子どもたちに理解できる授業が提供できることだと思います。

 

〇 共同生活のストレスは何か
突然知らない人が、家に来て親戚連れてきたり、トイレを掃除したらすぐに汚くしてしまったりしたことでしょうか。
そういうことも楽しむようにしていました。


〇活動での創意工夫は何か
とにかく関係作りを大事にした事です。
その関係がベースにあった上で、授業研究や学校巡回で一緒に教材をつくりました。
毎回活動のレポートを書き続けたことで、信頼も得られました。
当たり前のことですけど、やろうと思ったこともカウンターパートと相談しました。

 

〇赴任先の設備・教材はどう整っていたか
教育事務所なので、設備はある程度整っていました。必要な物は早めに一時帰国した際に日本で買って持っていったりしました。

 

 

 

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国際協力に興味のある方「ユネスコESD世界会議(名古屋)」について知っていますか?

開発学を大学院で学んでいた際に『ESD(Education for Sustainable Development)についてまとめたものを載せたいと思います。

  

 ⇒「ユネスコESD世界会議(名古屋)」とは名古屋で2014年に実施された国際会議です。

名古屋市:持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議について(市政情報)

 

『ESD(Education for Sustainable Development)
1. ESD(Education for Sustainable Development)とは?
ESDはEducation for Sustainable Developmentの略で「持続可能な開発のための教育」と訳されています。(注1)
今、世界には環境、貧困、人権、平和、開発といった様々な問題があります。ESDとは、これらの現代社会の課題を自らの問題として捉え、身近なところから取り組む(think globally, act locally)ことにより、それらの課題の解決につながる新たな価値観や行動を生み出すこと、そしてそれによって持続可能な社会を創造していくことを目指す学習や活動です。つまり、ESDは持続可能な社会づくりの担い手を育む教育です。』

www.mext.go.jp

 

1)開催に至る背景

ESDに関する経緯として、外務省が以下の通り述べている。

(1)「持続可能な開発」のために教育が極めて重要な役割を担うことについては、1992年に開催されたリオ・サミットの際にも認識されており、同サミット後、国連持続可能な開発委員会(CSD)においてユネスコが中心となって「持続可能な開発」のための教育のあり方について検討が進められた。

(2)ヨハネスブルグ・サミット実施計画の交渉過程で、国内NGOの提言を受け、我が国が提案し、各国政府や国際機関の賛同を得て実施計画文書に「2005年から始まる『持続可能な開発のための教育の10年』の採択の検討を国連総会に勧告する」旨の記述が盛り込まれることとなった。これを受け、我が国より、第57回国連総会に「持続可能な開発のための教育の10年」に関する決議案を提出。我が国の働きかけにより、先進国と途上国の双方を含む47ヶ国が共同提案国となり、満場一致で採択された。1

地球サミットがリオ・サミットで「アジェンダ21」が採択された。これは、「2030アジェンダ」につながるもので、持続可能な開発のあらゆる領域における包括的な地球規模の行動計画である。そして、「国連持続可能な開発のための教育の10年」の最終年である2014年11月に、ユネスコ及び我が国の共催により、愛知県名古屋市及び岡山市において「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議」が開催された。

 

2)設立・開催年など事業の概要

ESD ユネスコ世界会議は2014 年11 月10 日から12 日に、世界150 カ国・地域から閣僚級、ユネスコ加盟国の政府代表、NGO、研究者など1、000 人以上が参加し、ユネスコと日本政府の主催により名古屋国際会議場で開催された。会議では、「国連ESD の10 年」の活動成果の確認が行われるとともに、2015 年以降のESD の取組みを推進していくための「グローバル・アクション・プログラム」が発表された。また、会議宣言として、ESD のさらなる強化と拡大のための緊急の行動を求める「あいち・なごや宣言」が採択された。

 

3)ユネスコESD世界会議(名古屋)の活動に与えた影響

教育はSDGsの目標4に位置付けられており、ESDは目標4の中のター ゲット4.7に記載されている。しかし、教育については、「教育が全ての SDGsの基礎」である。特に、ESDは持続可能な社会の担い手づくりを通じて、17全ての目標の達成に貢献するものである。ESDをより一層推進することが、SDGsの達成に直接・間接につながっているといえる。また、SDGsを、ESD で目指す目標が国際的に整理されたものとして捉えることもできる。とあり、SDGsの中にESDが位置付けられており、切り離すことはできない。また、ユネスコにおいても、ESDに基づいて活動している。文部科学省及び日本ユネスコ国内委員会では、ユネスコスクールをESDの推進拠点として位置付け、世界180か国以上の国・地域で11,000校以上のユネスコスクールがある。

 

4)国際機関の活動の有効性に関する課題

有効性として、NGONPO、企業等による、地域の特性に合った多様なESDの実践や、ASP UnivNetが形成され、大学によるユネスコスクールの支援の体制が構築された。

ASPUnivNetとは - ユネスコスクール 公式ウェブサイト

ESDの学校での課題について以下のように述べられている。「国連ESDの10年」を通じて、ESDは、特にユネスコスクールを中心として取組が推進されてきたが、持続可能な社会の構築は、社会全体で取り組むべき課題であり、ユネスコスクールに限らず、全ての学校において取り組むべきものである。一方で、より広く学校現場でESDを推進するには以下のような課題がある。

○ESDの概念が抽象的であり、また、環境、平和、国際理解、人権等、多岐にわたる分野を包含するものであることから、一般的に十分に理解を得られているとは言えない。

○ESDが、既存の教科等で学んだ知識を総合的に活用し、課題の解決に向けて生徒が自ら考え、行動することを促すものであり、教科間のつながりや地域の人とのつながりを大切にするものであるという趣旨が十分に理解されず、付加的なものとしてとらえられることが多い。

○学校現場でどのような学習活動を行えば良いのかについての十分な情報がなかったり、適切なカリキュラムの編成上の工夫がなされていなかったりするために、体系的・継続的な学習がなされず、ESD的な活動を行っているにもかかわらず、ESDの目指す資質・能力の育成につながらないことも多い。

○ESDに熱心な教員がいても、異動等によりその取組が継続されなかったり、校内における理解が十分に得られず、教科横断的な取組が困難となるなど、必ずしもESDが学校内で組織的に実施されていない。

○学校現場での効果的なESDの実践のためには、教職員の意識・指導力の向上が不可欠であるが、ESDに関する教員研修が十分ではない。

上記のように、述べられており、日本の学校にて勤めている際に、感じたことと重なる点は多い。学習指導要領に盛り込まれているという点もあるが、すでに述べられているように、抽象的なことも多いと考える。また、こうした問題に、文部科学省や各自治体の教育委員会等が連携を図り、教員そして子どもたちの末端まで浸透していくことが必要であると考える。

 

 

5)「ユネスコESD世界会議(名古屋)」への日本の関わり方に関する私の評価

 ユネスコESD世界会議が、日本で行われており、「あいち・なごや宣言」にあるように、日本での開催に対して、謝辞を送っている。日本はこのESDに対する意識は高いように感じる。しかし、この「あいち・なごや宣言」やユネスコESD世界会議のことを知っている日本人が何割ほどになるのだろうかと率直に疑問に思った。この世界会議が行われた際、すでに教員として勤務していたが、学校の教員まできちんとした周知が行われていた記憶はない。教員にこのような周知がなければ、子どもたちに伝えるということもできない。

 名古屋市が作成したパンフレットを読んだが、学校への周知という文面は見当たらなかった。「Education」という文字が入っている以上、教員など教育関係者への周知や学習会などが行われる必要があったように思う。関心のある人だけのものにするのでなく、地道に取り組み少しずつ草の根のように、輪を広げていく必要性がある。

また、私はナミビアで学校教育にかかわる活動を行った。そういった意味では、すでにこのJICA海外協力隊活動というのは、ESDの提言していることを行っていると感じる。

 私はナミビアで「教育」の向上ということで現地の学校を巡回し、現地の先生方日本の手法を紹介したりワークショップを行なった。開発途上国の先生と直接コミュニケーションをしてきた立場として、今度は日本の子どもたちに「豊かで安心した生活を続けていくためにどうしたら良いかを考え、行動する人を増や」していきたいと思う。

 このESD世界会議では、取り決めを決めたところで、加盟国でない国や、戦争、紛争をしている当事国である場合などには、日本の関わり方は難しいように思う。その他に、中国の政治的な正当性によって、開発途上国スリランカに返済できないほどの金額を借金させ、港湾のインフラ整備を行い99年譲渡するという内容の契約をさせてしまったというニュースや、持続可能な開発よりも自国の利益を優先するというような社会情勢もある。そうした中でも、初めに述べたように地道に、NGOや日本のJICAのような組織などが、海外への支援や国内などの周知などを通して、ESDに取り組む必要性があると考える。

 

参考文献

1.「国連持続可能な開発のための教育(外務省)」

https://www.mofa.go.jp/mofaj/gaiko/kankyo/edu_10/10years_gai.html

2.「持続可能な開発のための教育(ESD)に関するユネスコ世界会議について」

http://www.city.nagoya.jp/shisei/category/53-5-22-5-2-0-0-0-0-0.html

3. 「今日よりいいアースへの学び 持続可能な開発のための教育(ESD)の更なる推進に向けて」

http://www.esd-jpnatcom.mext.go.jp/about/pdf/message_01.pdf

4.「日本ユネスコ国内委員会(文部科学省ユネスコスクール」

http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339976.htm

5.「ESDの推進にあたっての課題の整理及び推進方策についての論点ペーパー(案)」

http://www.mext.go.jp/unesco/002/006/002/012/shiryo/attach/1358530.htm

6. 「日本ユネスコ国内委員会(外務省)ESD(Education for Sustainable Development)」

http://www.mext.go.jp/unesco/004/1339970.htm

三大感染症「HIV/AIDS,結核,マラリア」が、なぜアフリカ(ナミビア)を苦しめるのか。~天然痘の根絶と比較して~

HIV/エイズ結核マラリアは、病原体も感染経路も異なるが、三大感染症として世界的規模の対策が行われている。改善傾向はみられるものの、まだ世界にはこの感染症で苦しんでいる患者が数多くいる。なぜこれほどまでに三大感染症の対策に苦慮しているのだろうか。

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病院のベッド

 三大感染症の世界的規模の対策が行われているが、改善傾向はみられるものの、まだ世界にはこの感染症で苦しんでいる患者が数多くいる。しかし、天然痘においては、1977年にソマリアにおいて、自然発生による患者が最後として、1980年にWHOによって天然痘根絶の宣言があった。

 天然痘は、エジプト王朝のミイラが天然痘によって亡くなったことが推測され、何千年も前から存在していたとされている。日本においては、渡来人が日本に渡ってきたことによって広がり、奈良時代前後においては、流行していたことが続日本紀によってわかっている。疫病流行は697年~721年、732年~741年、757年~791年の三つの時期に多く流行しており1)奈良の大仏の建立についても天然痘の流行から、つくられたともいわれる。

1700年代後半、エドワード・ジェンナーが乳絞りの女性には、牛痘のかかった跡が残っていたにもかかわらず、天然痘にはかからないということを発見した。これは、天然痘ウイルスと近縁関係の牛痘ウイルスの感染によって、天然痘ウイルスに対しても免疫が獲得される反応である。

根絶できる感染症には、条件がある2)。(1)感染すれば必ず診断できる。それも肉眼的に明瞭な症状が必ず現れる。(2)その感染症を引き起こす病原体の自然宿主はヒトに限られること。狂犬病のように、多くの動物が感染する感染症においては、根絶は困難である。(3)効果的で良いワクチンが存在する。の3点である。天然痘はこの条件を満たしおり、アメリカが主導となって、全員の種痘を目指した。しかし、戸籍や住民票の無い地域や、輸送体制、実施資金などが不十分であったため、WHOは予算を組み、感染者に対して、懸賞金を懸け、患者を見つけ、その周りでワクチン接種をして感染源を断つという手法を取ったことで、1977年10月を最後に天然痘の患者はいなくなった。

上記の天然痘の歴史をたどっていくと、根絶できる感染症の3つの条件が三大感染症HIV/AIDS、結核マラリア)には、当てはまらない。まず、上記の条件が当てはめると、HIV/AIDSについては、(1)肉眼的に明瞭な症状が必ず現れるということはなく、潜伏期間を経て、AIDS発症が起こる点。(3)効果的で良いワクチンは存在しないという点。現在の治療においては、HIVの増殖を抑え、免疫力を維持することが可能であり、AIDSを発症しても薬を飲み続けることで、通常の生活は送ることができるが、根治をすることはできないという点。

次に、結核については、(1)初期症状は風邪に似ており、明瞭な症状とは言い難いという点。また、(3)BCGというワクチンは存在するが、BCG接種を受けた人でも5~10%の人が発症する点。また、感染してから2年ほどの間に発病することが多いとされており、根絶するには、課題がある。また、どのような理由で結核菌が増え始めて発病するのかが解明されていない。

最後にマラリアは、ハマダラ蚊によって媒介するが、(1)症状が風邪、インフルエンザによく似ており、症状だけでは判断しにくいという点。(2)感染源が蚊であるという感染症であるという点。(3)効果的なワクチンは存在しないという点。マラリア予防薬は販売されているが、飲み続けなければならないことや、処方箋が必要であること、高価であり所得が低い人々にとっては手の出しにくいものであると考える。これらの点から、天然痘と比較して三大感染症が根絶できない理由に挙げられる。

ここからは、様々な背景や文化的なことや医療などから考えていきたい。HIV/AIDSに関して述べると、宗教的な問題で、コンドームをすることがタブーとなっていること慣習がある地域があり、根本的に文化的な問題がある場合が考えられる。医療的な問題としては、AIDS発症を遅らせる薬があったとしても、貧しい人にはいきわたらないということや、輸送体制が整っておらずいきわたらないということも考えられる。行動変容として、経済的に貧しい人たちは子どもたちに学校へ行くことよりも、子どものうちから働いた方がよいと考える親がおり、教育が受けられない子どもが成長し、知識がないまま性交渉に至ってしまうということも考えられる。

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小学2年生の算数でレッドリボンを扱う

特にサハラ砂漠以南のアフリカ南部地域において蔓延している。WHOによれば、コートジボワールコンゴザンビアでは10代の妊娠率は10%を超えている3)。この要因として、経済的に貧しい女性が、経済的に豊かな男性の下へ近付いていき、その男性の子どもをつくることで、妊娠が悪いことではないと考え、豊かな生活になる方を選んでいるという。このような経済的な問題が罹患率を上げている。貧しい女性が富を得たいという欲求から、コンドームをすることなく感染に至る行動をとってしまうことや、正しい知識を得る機会がなく、誤った認識から、感染してしまうということがある。子どもには必ず教育機会を与え、性教育感染症に対する正しい知識をもつことが大切になってくる。

私は、アフリカ南部地域のナミビア共和国にて活動していたが、小学校から高校まで「LIFE SKILLS」という教科があり、妊娠やHIV/AIDSの内容を多く取り扱って教育が行われている。また、男性の割礼を学校が病院で行うように推奨しており、割礼を終えた生徒たちをチェックしている。男性のペニスの包皮を切る割礼をすることで、約60%の予防ができるという。それでもなお、ナミビア共和国では、HIV/AIDSが最も高い死亡率を占めている。人口230万人と少ない国であるが、毎年約3900人が亡くなっている。

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エイズ予防のため割礼の推奨、アメリカの支援が入っている

私の住んでいたOmusati州では、HIV/AIDSカウンセリングと検査プログラムがあり、この統計によると、20万人を超える住民のうち、2015年4月から9月までの6ヶ月間に検査を受けたものは2万人しかいない4)という。HIV検査を受け、陽性だった場合に一生続くHIV治療に対する恐怖を抱くという。また、副作用があるのではないかと誤解している人や、パートナーに打ち明けなければならないこと、差別や偏見を受けるかもしれないと心配している人もいるという。このように検査をすることを恐れ、罹患していることさえも知らぬまま、性交渉におよび感染が広がっていってしまう。

ナミビア共和国では、学校での HIV 検査の義務化が効果的な施策となる可能性があると記事にもなっている5)。政策の問題になってくるが、検査を義務化することで早期の治療が可能である。その他に問題となっているのは、多くの患者がいるため、すべての患者を一日で観ることができないという点である。私が見学した公共の病院は、9時から17時までの診療時間であるが、17時になった時点ですぐに閉まってしまうため、午後以降に診療所に入った患者のほとんどは、診察してもらうことができない。診察できなかった場合には、次の日にまた来なくてはならない。こういった公共の病院や診療所の問題を抱えている。また、公共の病院は国からの保険があるため、約10ドル(約100円程度)の料金で診てもらうことができるが、私立の病院では先進国並みの医療が受けられるが、一切保険が効かず、高額な診療代となってしまう。

こうした問題は、歴史的な背景も抱えており、アパルトヘイト政策によって黒人との住み分けを行い、負の貧困がいまだに続いている。私立の病院においてはほとんどが白人の院長で、利用者も白人が大多数を占めている。そうしたことから、貧困層で生活をしている人々は、罹患していても医者には行かず、心霊治療師の祈祷に頼ることもあり、正しい知識を広める必要がある。しかしながら、正しい教育をしていても制度的な問題や歴史的な背景があり、苦慮していると考える。

HIV/AIDSに関連して、結核との合併症が大きな問題となっている。HIV感染者はHIVに未感染の人より30倍から50倍も結核を発病しやすいとされている。6)もともと結核菌に感染しても病気を発病するのは、10%程度と言われているが、体の抵抗力が落ちると結核は発症しやすくなる。特に、高齢者や、糖尿病、腎不全などの薬を使っている患者は、抵抗力が落ちているため、結核を発病しやすい。HIV/AIDSと同様に、結核においてもサハラ砂漠以南のアフリカで現在起こっている。実際に私が見学したナミビア共和国の診療所においては、HIV検査所のすぐ隣には、TB(Tuberculosis)と書かれた診療所が設けられていた。

 

結核で大きな問題となっているのが、薬剤耐性結核の登場である。ほとんどの場合、結核は治療によって完治が可能であるが、標準的な結核治療でも6ヶ月間、治療薬を飲み続けなければならない。こうしたことや副作用が原因で治療をやめてしまう人がいる。この治療の中断により、結核菌は耐性を持つようになり薬剤耐性菌が生まれる。

こうした薬剤耐性結核の治療は、特に深刻であり、治療に成功した患者はわずか30%である。7)薬剤耐性結核が広がれば、深刻な問題となる。世界全体で薬剤耐性に起因する死亡者数の1/3を占めているという。また、薬剤耐性結核の治療は、通常の結核治療よりも費用がかかり、治療期間も長くなる。こうしたことは、治療をやめずにきちんと薬を飲み続けることや、病院の管理下におき適切な治療をする必要があると考える。

マラリアについて、私はマラリア発生地域におり、マラリア検査簡易キッドを常備しており、薬も飲んでいた。しかし、飲み続けている現地の人はほとんどいない。また、はじめに述べたように、処方箋が必要な薬であり薬価も高い。

マラリア流行地域でない場所においても、飛行機によって蚊が持ち込まれてしまい、感染が広まってしまうというリスクがある。これを「空港マラリア」と言い、空港近くの住民を刺して、感染してしまうという。また、「ウイルスや細菌といった病原体が症状の表れない潜伏期間中に空港の検疫を通過し、国内に持ち込まれてしまう。これが「輸入マラリア」と呼ばれるもので、各国は対策に苦慮している。」8)とあり、症状がすぐに出ないということも大きな問題でもある。

マラリアの種類には、4種類あり、熱帯熱マラリア原虫、三日熱マラリア原虫、四日熱マラリア原虫、卵型マラリア原虫があり、複数の感染をするというリスクもある。特に、熱帯熱マラリアは、重症化する恐れがあり、早めの診断が必要だが、潜伏期間が長いとすぐに判断できないということも考えられる。蚊の侵入を防ぐために、水際対策をとして、航空機内に蚊がいないかどうかの検査や、空港内で蚊を光で誘い込んだり、側溝内のぼうふらの生息を確認したりする調査を実施もしているという。

流行地域での対策として、まずは現地の人への正しい知識を広める(マラリアの種類や治療法、予防薬など)ということや、殺虫剤入りの蚊帳を配布するなどして、蚊帳の重要性を喚起していく必要性がある。従来の蚊帳では、暑く寝られないという理由で利用されないと聞くが、最近の蚊帳は通気性も優れ、殺虫剤も含まれている。このようなものがあるということを周知するということ、配布するということが必要ではないかと思う。

最後に、はじめに述べた天然痘においても、「すぐに根絶ができたわけではない。当初、1975 年に根絶に至ったと考えられたが、ソマリアは、当時エチオピアとの戦争状態にあり、根絶計画が 2 年遅れている。戦争は、感染症対策をすることすらできず、感染症を増やしてしまう。平和がなければ、感染症対策はできないという教訓がある。」1)とあり、現在の世界情勢においてもテロや内戦が続いている地域があり、こういった内戦、紛争、テロが感染症の対策を遅らせていることも考えられる。平和であることが前提として対策を講じることができる。

 

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1)奈良時代前後における疫病流行の研究

https://ci.nii.ac.jp/els/contents110007643142.pdf?id=ART0009462161

2)「天然痘の根絶-人類初の勝利」

http://www.eiken.co.jp/modern_media/backnumber/pdf/MM0911_02.pdf

3)『貧乏人の経済学』

A・V・バナジー&E・デュフロ著/山形浩生

4)「Most people in Omusati refuse to get tested for HIV

https://www.newera.com.na/2015/12/14/people-omusati-refuse-tested-hiv/

5)「Daughton Suggests Mandatory HIV Testing for Learners」

https://allafrica.com/stories/201712220547.html

6)エイズ結核合併症の現状

http://www.jata.or.jp/rit/rj/0112osuga.html

7)薬剤耐性結核

https://www.theglobalfund.org/media/7259/publication_drug-resistanttuberculosis_focuson_jp.pdf?u=636651702350000000

8)空港マラリア:多くの国に持ち込まれる危険性を専門家が指摘

https://idsc.niid.go.jp/iasr/21/248/fr2487.html

 

帰国後表敬訪問(名古屋市)にてナミビアの活動を報告

JICA海外協力隊活動は、派遣前や派遣後に居住地の役所などに行き市長などに報告することがあります。

今回は、その帰国後の表敬訪問が8月に実施されたため、そこで発表したプレゼンテーションの内容を公開します。

これまでやってきたことを振り返るとともに、このように活動を報告できる場を与えられたことに感謝したいと思います。

 

www.facebook.com

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www.jica.go.jp

 

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アフリカ(ナミビア)の差別と新型コロナウイルス感染症(2020年8月現在の状況)

2020年8月現在のナミビア新型コロナウイルス感染症の状況と3月まで現地にいた当時の様子、差別や偏見について考えたいと思います。

 

私は3月下旬に任期が終了し、日本へ帰国しました。3月はコロナウイルスが世界中に蔓延し、全JICA海外協力隊員が撤退し始めた頃でした。

ナミビアでも初めての感染者がスペイン人旅行者から発生し、ナミビア人の方々もとても敏感になり、首都ウィントフックでは急にマスクをする人が増え始めました。

同時にナミビア政府は外国人の出入国を禁止しましたので、ギリギリの帰国となりました。

 

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ナミビアの同僚と友だち

 アフリカの多くの場所ではアジア人を見ると、「China」と言って、カンフーの真似をしてバカにするような?しぐさを言う人もたまにいます。

このコロナウイルスのときは、街を歩くだけで、避けるようなしぐさや自分に向かって「Corona!!」と言って明らかな差別をされました。また、スーパーで買い物をしていると、店員からも「コロナ」と言われ、どこにも向けようのない腹立たしい思いもしました。

いつどこで感染するかわからない未知の感染症に対して、恐怖を抱くからこそ、このような言動が見られたとは思います。

 

 ナミビア人のハウスメイトや友達は、「中国人は、儲けるだけ儲けて還元しない」とよく口にしていました。もともと、中国人に対して差別的な言葉を向けるのもこうした印象があると思われます。そして、中国が発生源であることが助長されてこうした発言につながってしまっていると思います。

 やはり、ナミビアは首都圏や都市圏では医療技術は発展しているものの、一部のお金のある人しかうけることができません。蔓延した際には、貧しい人々は死と直結するということが直感的にわかるということも考えられます。

 

 ただし、すべてのナミビア人がこういった差別をするわけではありません。自分の過ごしてきた親しい人々は理解のある人がほとんどでした。教養のある人も多くいることも事実ですが、貧困や教育がきちんとされないということは正しい知識が養われないということも忘れてはなりません。

 

 先日、(2020年8月)ナミビアの元同僚に電話をしたところ、現在のナミビアの感染状況は累計感染者数が2000人を超えたとのことです。日本に比べると少ないですが、医療体制を考えるとやはり怖い存在であることは間違いありません。また、ほとんどは首都WindhoekやWalvisbayという輸出入を行っている貿易拠点となる場所からの発生だと言います。

 

ちなみにWalvisbayは、日本のマグロ漁船なども寄港しマグロの輸入が行われています。日本ではナミビアは、あまり知られた国ではありませんが、どこかで世界はつながっています。日本でも差別や偏見が簡単に生まれることもあり、ナミビアだからこれらの差別が起こったのではありません。

 今、アメリカでは黒人差別の問題が起こっています。日本ではあまり関心がもちにくいとは思いますが、日本も多くの外国人がいます。(実際に学校現場では多くのハーフの子どもや外国人が多くいます)そうした人たちは、外国人のルーツを隠そうとしている人もいます。隠すということは、日本でも差別や偏見があるということとも考えられます。

アフリカ、ナミビアで外国人というマイノリティの立場を経験した一人として、異文化の理解できる人間でありたいと思います。

 

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ナミビアの子どもたちと

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日本福祉大学大学院 国際社会開発研究科の広報(国際協力キャリアガイド 国際開発ジャーナル社)

日本福祉大学大学院 国際社会開発研究科の広報依頼が、国際協力キャリアガイド 国際開発ジャーナル社からあったので、抜粋してこちらにも載せたいと思います。

 

「国際協力キャリアガイド」という雑誌への投稿となります。

これまでのブログに載せているような内容もありますがご承知ください。


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日本福祉大学大学院 国際社会開発研究科 国際社会開発専攻

Q.1国際協力をはじめ世界に関心を持ったきっかけを教えてください。
  ※具体的なエピソードがあれば、可能な範囲で詳しく教えてください。
中学生の時に授業でMichael Jacksonの「Heal the world」のプロモーション・ビデオを見た際、内戦や貧困等で苦しんでいる様々な人種の子どもたちの姿が印象的で、海外に興味をもつようになりました。
大学生の時にはオーストラリアの学校で日本語教師ボランティアを体験し、カンボジア旅行で貧困地域を見て、国際協力に興味をもちました。日本とは大きく異なる文化や時間の流れを感じ、いつか国際協力の活動をしたいという気持ちが沸き上がるようになりました。そして、教員として8年間、学校現場で働いた後、「現職教員参加制度」によってJICA海外協力隊としてアフリカのナミビアで教育に関する活動への参加をしました。ナミビアでの活動は教育事務所に配属され、管轄内の学校を巡回しながら、現地の教員へのアドバイスをしたり、ワークショップを実施したりして、教育の向上に貢献できるよう活動していました。

 

Q.2現在の研究テーマを教えてください。
  ※フィールド調査のご経験などもあればお教えください。
JICA海外協力隊と大学院を同時並行で2年間履修したため、これまでの教員経験を活かし、事例検討会をナミビアの現地の教員に実施することへの影響についてまとめました。
論文テーマは、「事例検討PCAGIP法がナミビアの教員の指導方法に及ぼす影響 ―事例提供者への関わり方に着目して―」でした。事例検討会とは、教育分野や医療・福祉分野などで実施されている会議で、事例を基に様々な意見を取り入れ、改善点を見出していくものです。その事例検討会を実施し、実施したときの状況や学校間の違い、実施した教員の気持ちや発言を分析し論文にまとめました。

 

Q.3日本福祉大学の学びでよかった点について教えてください。
日本での教育での経験はありましたが、これまでに国際開発や国際協力といった分野を専門的に学んだことがありませんでした。そこで、JICA海外協力隊での活動をしながら学びたいと思い、通信教育である本学を選びました。現地での経験を海外にいながら、学ぶことができ大変意味のあるものになりました。
ナミビアについての歴史的背景や教育制度、教育行政や教員養成について文献を調べることで、現地の教育官や教員とも、歴史や教育に関して深い話をすることができるようになりました。
また、国際開発や人類学という視点で、先進国といわれる欧米・日本で実施していることを開発途上国といわれる国々ではそのまま技術を移転できるとは限らないということや逆に軋轢を生んでしまうということを体系的に学び、日本の教育をそのまま生かすことができない可能性があるということに気づくことができました。様々な背景などを俯瞰的に考えることができるようになりました。

 

Q.4 大学院進学を検討している読者に対して、ご自身の経験から大学院で学びの意味など、伝えたいことがあればお聞かせください。
 JICA海外協力隊と大学院を同時並行で2年間履修し、大切にしてきたことは、この大学院で修士号を取得することが目的となってはいけないということだと思います。
日本福祉大学大学院国際社会開発研究科では様々な職種の社会人の方が在籍しており、その方たちが口々に話をしていたのは、現在、取り組んでいる仕事や活動などに生かす姿勢が大切であるということです。社会人という立場上、研究フィールドは、目の前に広がっており、机上の空論ではいけません。
履修した科目「国際保健論」で三大感染症HIV/AIDS」「マラリア」「結核」の討論をしました。日本ではなじみが薄いですが、アフリカ、ナミビアでは重要な改善すべき課題として存在していました。私はマラリアの予防薬を飲んで生活し、HIV/AIDSは学校で取り扱うことが多く、学んでおいて良かったと心から思いました。また、現地で起こっている問題を学習の中で取り扱うということができ、相乗効果もありました。
大学院で学ぶにあたり、本来していることがおろそかになってしまっては、元も子もありません。卒業することだけを目的とせず、目の前の活動や仕事を大切にしてほしいです。
最後に、論文執筆は想像以上に大変です。睡眠時間を削って執筆し、頭痛に襲われたこともありました。レポートなども定期的にあるため、自身の生活とのバランスを考えなければ難しいと思います。仕事をしながら、在籍している方がほとんどであるため、これらのことを参考にしていただければ幸いです。
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