JICA海外協力隊現職教員特別参加制度20周年 ~日本の教育現場で活躍する帰国隊員~(ナミビア)
文部科学省の文部科学広報2021年7月号に掲載させていただきました。
結果的にブログの内容をまとめたような形になりましたが、このブログを書いていたおかげで、書きやすかったです。
ブログをやっていたからこそ、その時の気持ちを思い返すのもとても早かったです。
https://www.koho2.mext.go.jp/260/?pNo=13
ナミビアにて教員研修を実施する様子 |
私は、現職参加制度によって、ナミビア北部に位置するオカハオという地域に派遣され、33校を管轄する教育支所で、現地の授業力の向上や教材開発などに取り組みました。日本で8年間の教員経験を積んだ上での派遣だったので、現地の小学校を巡回し、授業のアドバイスや教材の紹介などを行う際、日本での経験が大変役立ちました。
現地の先生の中には、自信をもって授業を行っており、外国人の私に対して、良い印象でない先生もいらっしゃいました。こうした環境の中で、日本での教員経験を活かした提案や、よりよい教育手法の紹介ができたことで、受け入れてもらえるようになりました。また、日本の在籍校の生徒たちに、ナミビアの日々の生活や文化などを紹介する「ナミビア通信」を毎月送付し、異文化に興味をもってもらうことができました。
ナミビアから帰国後、日本の中学校に復帰し、総合的な学習の時間において、国際理解教育を実施しました。日常におけるつながりを感じてほしいと思い、「日本と世界のつながり」というタイトルで、授業を行いました。例えば、「学校に行くこと」「水や電気が使えること」「近くにお店があること」などの日本人にとっての当たり前を投げかけ、海外では違うことがあることを伝えました。特にアフリカでは、電気が通っていない地域があること、水を毎日井戸から汲み、運んでいる人々がいること、学校に毎日通うことができない子供がいることなど写真を交えて話しました。昨年度は、コロナウイルス感染症の影響で、日本の生徒たちも学校に行けなかった期間があり、日常の生活が普通ではなくなったことを改めて考える時間にできました。
総合学習「輸入や輸出ができない世界だったら?」 |
そのほかに、「もしも輸入や輸出ができない世界だったら?」というテーマのもと、どんなことが起こるのか考えさせました。生徒たちの身近にある筆箱や靴などがどこで作られているのか確認させると、靴は「ベトナム」、筆箱は「マレーシア」、など、ほとんどの製品が海外からの輸入品であるとわかりました。調べ学習では、SDGsについて、グループに分かれて発表をしました。「エコバッグを使う」「募金をする」などの声があり、今の暮らしと世界がつながっていることを一年かけて深めました。
最後に、私は、子供たちとのかかわりの中で、少数派の立場にも耳を傾けることのできる人間でありたいと思っています。私がナミビアで生活しているときに、街に唯一の日本人ということで、じろじろと見られたり、いわれようのないことを言われたりすることがありました。こうした経験により、日本に住んでいる外国人の視点に立ったり、マイノリティの方の気持ちになって考えられるようにもなりました。話をしたり、写真を見せたりすることはできますが、実際に経験しなければわからないことが多いと思います。聞くより見るより自分で経験をすることで、人の痛みもわかるようになると思います。これからの多様な社会において、勇気を出して挑戦してみようと思うような子供が一人でも増えてほしいと願っています。