タイ王国からのお便り JICA海外協力隊 「人身売買」人権について考える
同期隊員のJICA海外協力隊の佐藤先生にお話を伺いました。
教員の現職参加派遣をされています。
先月、12月10日は「世界人権の日」です。ナミビアでは祝日になります。タイでの活動内容を伺うと、知らないことが多く、「人権」について考えさせられました。「知ること」は学ぶことの一歩として、とても大切なことだと思いました。
~タイ王国の協力隊員に聞きました~
佐藤仁美先生 青少年活動隊員(中学校英語科教員)
・タイの印象について教えてください。
優しい人が多くて、ご飯がとてもおいしい国です。争いやもめ事を好まず「和」を大切にするところや、年上の人を敬うところは日本と似ています。
快適、元気という意味の「サバイ」というタイ語があります。タイの人はサバイが大好きで、何事も無理せず、マイペースに行うので、日常はゆったり、平和に過ぎていきます。
・職種(活動内容):「青少年活動」隊員
人身取引(人身売買)という言葉を聞いたことがありますか?人身取引とは、甘い言葉でだましたり、暴力を使ったりして、強制的に売春や労働をさせて利益を得る行為のことで「現代の奴隷制」ともいわれています。
私は、「コラート人身取引被害者保護福祉センター」で活動をしています。ここでは、人身取引の被害にあった12歳から18歳の少女たちに、衣食住や情緒安定プログラム、職業訓練の機会を提供しています。私は現在、英語や日本語、人身取引やHIV/AIDSに関する授業を行ったり、毎朝の掃除の指導を行ったりしています。授業以外の時間は、少女たちと遊んだり相談にのったり、できるだけ多くの時間を一緒に過ごしています。
・なぜ青年海外協力隊に応募したのですか。
小学生の時、自分と同じくらいの年のエチオピアの子どもたちが、飢えに苦しんでいるのをテレビで見て衝撃を受け、その時から、海外で働くことが夢でした。大学の時、様々な社会問題について勉強し、一番興味をもったのが、人身取引でした。「何とかしたい!」という気持ちがありましたが問題が大き過ぎて、具体的に何をすればいいか分かりませんでした。しかし、少しでも教育を通して、サポートできるようになりたい、そんなふうに思い教員になりました。そして、教員として青年海外協力隊に応募ができると知り、様々な職種がある中、「人身取引被害者保護福祉センター」の文字があったとき、「これだ!」と思い、応募をしました。
・活動で大変だったことを教えてください。
一度も学校に通ったことのない子どもたちに英語を教えたとき、最初は戸惑いました。ラオスという国の山奥にある農村出身の少女たちで、現地の言語を話すことができますが、読み書きはできません。公用語であるラオス語も、読み書きができません。「消しゴムって何?」そんなところからのスタートでした。そこで、ブタ、イヌ、ネコなどの農村にいそうな動物を折り紙で一緒に折って、動物の名前や色を勉強しました。その後、画用紙に動物を貼って、英語、日本語、ラオス語、タイ語でどう書くのかを勉強し、好きな絵を周りに描きました。完成したときの満足そうな表情は忘れられません。
彼女たちは、貧困であること、そして文字の読み書きができないことで、悪い人たちにだまされ、人身取引の被害にあってしまいました。彼女たちとの出会いを通して、改めて教育の大切さを痛感しました。
・中学生へのメッセージをお願いします。
自分の好きなこと、やりたいことを生涯をかけて探し続けてください。好きなことや将来の夢は、いくつあっても、何度変わってもかまいません。これから先、たくさんの困難や失敗を経験して、人間関係に悩むこともあると思います。そんなときも、自分の目標や好きなことを知っていたら、立ち直れます。目標は希望になるからです。そして、辛いときこそ、もう駄目だ!とは思わずに、そんな状況だからこそ学べることをたくさん学んでください。そこで学んだことが、その後の人生に必ず役立ちます。お互い頑張りましょう。
岩塚 善哉(派遣期間:2018年7月から2020年3月まで/小学校教育)| ナミビア | アフリカ | 各国における取り組み - JICA
この記事はナミビア通信に掲載したものを再編集したものです。